先の大戦を経験した生存者の数が限られてきた一方、気候変動や疫病の蔓延により誰もが被災者になりうる時代、災いの現実に向き合うには、被災者の声に耳を傾け記録し伝えるためのリテラシーと、その前提としての当時者意識の涵養が必要である。しかしそれは簡単ではない。真の「声」の発露は難しく、記録・記憶は、美化・消費されることで、災いそれ自体を伝える力を失う危機と隣り合わせにある。
声のつながり研究会は、ありのままの「声」を残す方法をめぐって、被災の記憶が残る地から現在形で発せられる当事者の生きた声に耳を傾け記述する社会科学的実践を、すでに記述された過去の「声」に耳を傾け解釈する文学・哲学・歴史学の人文学的アプローチに接続し議論する枠組みを構築する。異なるフィールドから「声を聴き、声をしるす」ための実証・実践研究を持ち寄り、主体から「声」を奪う仕組みへの理解を深め、さらにそれに抗う姿勢を下支えする理論の言語化を目指す。
正式名称を「声の主体による文化・社会構築研究会」といい、年に1~2回の本研究会「声のつながり研究会」と、談話会「声のあつまり」(随時)を持つ。